自然な環境で生育する植物は、植物内生菌(真菌や細菌など)と共生していたり、根の周辺で生息する微生物と共生の関係を築いたりしており、植物は多様な微生物の助けを借りて栄養を効率的に吸収したり、病原菌や害虫などを撃退したりしていることが知られています。
当然ながら、稲も内生菌と共生したり、根の周りの微生物と共生関係を築いたりする能力を持っています。
生きもの育む田んぼの稲つくりでは、稲が持つ能力を最大に引出すために、そして、田んぼを自然な環境に近づけるために、人間が主体の稲つくりではなく、田んぼの生きものが主体の稲つくりを行っています。
例えば、殺菌剤や殺虫剤などの農薬を使わないことや除草剤を使わずに除草機や手取りでの除草するのは当然ですが、それ以外に、田んぼの生きものの生態に合わせた畦草の管理やほぼ一年中湛水状態にする水管理、土壌微生物圏の破壊を最小限にする表層耕起などがあげられます(具体的にどのような作業を行っているかについては、別の物語で紹介しています)。
農薬と肥料を一切使わない上に、冬も含めて、ほぼ一年中、湛水状態の田んぼでは、微生物が稲わらを分解する過程で養分が供給され、その養分は藻などの植物プランクトンを大発生させ、次いで、動物プランクトンも大発生します。
次に、動・植物プランクトンを餌とする巻貝や昆虫の幼虫などの小動物が生息し始め、やがて、ヘイケボタルも舞うようになります。
つまり、食物連鎖環境が田んぼに形成されることになます。
稲の生育に必要な養分は、稲自身の多様な微生物との共生、有機物を分解する微生物や小動物、世代交代が短い微生物や動物・植物プランクトンなど、自然の営みの中で生み出されています。
このような田んぼ環境で生育する稲は、野生化し、頑健さを伴って大きく生長し、秋には大きな穂を実らせます。
生きもの育む田んぼで収穫されるお米には、自然の恵みがギュッと詰められるため、栽培年数が増すごとに美味しさが増します。